一つ目の嘘です。私は施設で生まれ育ちました。
外の世界を全く知らずに生きてきたので、この国と隣国が戦争をしていることなど知りませんでした。
ここから一歩出るだけで上空から爆弾の雨が降り注ぐことなど、悪い夢の話だと思っていました。
二つ目の嘘です。私は弟をとても大切に思っていました。
ですから彼が兵隊に志願したとき、とても心配でした。
悪い夢にとりつかれて、外の世界を平和にしてくるだなんて、馬鹿なことを言わないでと止めました。
三つ目の嘘です。私はともに暮らした友人たちを好きでした。
同じテーブルで食事をし、同じ話を聞いて笑い、いつでも励ましあった友人たちでした。
その彼女らが外に出て真実を確かめたいと言ったのです。彼女らは、自らの意思でここから離れたのです。
四つ目の嘘です。私はこの生活を愛していました。
望めばパンも水も与えられる。娯楽も提供される。何の不自由もない生活です。
満たされていたので、私にここを抜け出す理由などありません。
五つ目の嘘です。私は嘘をつきません。
いつだって真実をお話してきました。妄言など吐くわけがありません。
ですから私の言葉は、私の存在は、いつでも信じられるべきなのです。
正答。
私は幼い頃にここに連れて来られ、ここで暮らせと強要されました。
施設の決めたものしか与えられず、私の希望するものはことごとく却下されました。
一緒に来た弟は兵に志願させました。出て行くときに泣いておりましたが、そんなことで私の心は動きませんでした。その彼はついにここへは戻ってきませんでした。ただ死亡したという報告だけがありました。
ここで共同生活を送っていた同い年の女の子たちには、ここから出ることを勧めました。丘の上まで行けば隣国の飛行機が助けてくれるはずだと、施設から追い出しました。今ここにいる私が見ているのは、鉄の雨に体中を貫かれた彼女ら四人の遺体です。
私は五人の人間を葬りました。隣国からここへきて、今年で十五年になります。この国の未来を潰す為、いやいやながらもここで暮らしてきたのです。
さあ、私の言葉は嘘だと思いますか。真実だと思いますか。
今から私は舌を噛み切って死にますが、どうかそのあとも、あなたは私の言葉で苦しんでください。
こんなことが、この国では五年に一度は必ず起きているのですよ。