彼女の声はとても綺麗。
透明感のある、ガラスのような音。
グラスハープってあるじゃない? とても素敵な音がするよね。
イメージとしてはあれが近い。彼女が歌うと、空気が澄んでいく心地がする。

でも、でも。
僕は彼女の声以外には興味がない。
だからいらないものは削ることにした。
これは彼女を僕だけのものにしたいという、愛の表れでもある。

まず、右腕。
これは君に何故かナイフを取らせるからいらない。
どうして僕に刃を向けるのか、残念でならない。切除しよう。
次に、左腕。
彼女は歌っていればいいのに、僕に触れようと手を伸ばす。切除しよう。
それから、右脚。
ここから出て行こうとするなんて、酷いよ。切除しよう。
最後に、左脚。
これだけ残しておいても仕方ない。切除しよう。
大体、歌うだけならこれらはいらない。
頭と腹があって、それが繋がってさえいればいいのだ。

あぁ、でも。
四肢を切断したときの、君の悲鳴。
あれは今まで聴いたどんな歌よりも美しかったな。
次に聴けるのは、君が歌わなくなったときだろうけれど。
それまで、忘れないよ。