髪が他の人と違うからって、随分誤解もされたし嫌がらせも受けた。
最初からわたしをわかってくれていたのは、向かいに住む彼らくらい。
あいつなんて、わたしのことをずっと守ってくれるし。
でも暴力はやめて欲しいな。進路に響くよ。
大助が人を殴った時、初めて愛さんが怒ったところを見た。
いつもは弟をこれでもかってくらい溺愛してるのに、あの時だけは声を張り上げていた。
「ああいう場合、叱るのはお母さんの役。
お父さんは言い分をうんうんって聞いてあげればいいと思ってるの」
ホームドラマみたいだなぁと思っていた愛さんの言葉が、よくわかった瞬間だった。
「じゃああの後、恵さんが諭してたんですか?」
「そうね、お兄ちゃんもその時は真面目に話してたわ」
恵さんも大助を可愛がっている。
それこそ異常なくらい可愛がっていたこともあった。
この家のきょうだいを見ていると、自分が一人っ子なのを少し寂しく思う。
でも愛さんにそんなこと言ったら、さも当然のことのようにこう言われるから口にしない。
「大助と結婚するんだから、亜子ちゃんは私たちの妹でしょう」
そんなの決まってないし、付き合ってもいないんだけど。
バイトから帰ってきた大助は、ただいまを言うより先にわたしを見つける。
「なんだよ亜子、来てたのか」
「愛さんがお仕事休みだからお茶しないかって」
「ちょっと大助、ただいまは?」
「あー、ただいま姉貴」
「よくできましたー。ご褒美に今日のご飯、大助の好きなもの作っちゃうからね!」
それ、もうすぐ18になる弟に言う台詞かなぁ。
わたしが苦笑している間に、大助は仏間へ行く。
両親にただいまを言うために。
もうすぐ恵さんも帰ってきて、同じことをするんだろう。
夕食に誘われた。
母にメールを送って、言葉に甘えることにした。