彼女は”こどもたち”と遊んでいる。
自分の息子も交え、タンポポやツメクサで何か作っている。
“こどもたち”はできたもの―冠や首飾りなど―を彼女に渡す。
花を纏った彼女は儚げで、今にも花と共にどこかへ消えてしまいそうだ。
だから私は、花が嫌いだ。
儚いものは美しいが、彼女を奪うような花はいらない。
「血の方が似合う」
私がそう呟くと、ベルゼブブは決まっていやそうな顔をする。
「趣味ワリぃ」
「しかしそう思わないか?彼女の白い肌に最も似合うのは、美しい紅だ。
…虫ごときにこの美しさはわからないだろうな」
「虫じゃねェって!俺様はれっきとした」
「失礼、羽虫だった」
「だから違うっての!」
使い魔のくせに少々生意気すぎるのではないだろうか。
後で彼女に蝿叩きでも持たせようか。
このような下らない事を考えていると、何時の間にか窓の外に人影は見えなくなっていた。
ドアが小さく音を立てる。
「入りなさい」
私の声に数秒遅れて、彼女は静かに入ってくる。
花の冠を頭に載せたまま、無表情で。
「”こどもたち”に作ってもらったのですか?」
私の言葉にも、ただ頷くだけ。
話せないというのは面倒なことがなくて良い。
余計なことを言われずに済む。
しかし、私が彼女の声を聞いてみたいのも事実だ。
「綺麗ですね、…Ms.Murder」
彼女をもっと見たい。
彼女の全てを私のものにしたい。
そうして私だけの人形を作るのだ。
もし邪魔になれば捨てれば良い。
彼女は木漏れ日の下で、何を考えていたのだろう。
罪の意識を感じていたのなら、恐れを抱いていたのなら、
私が”保護”し、誰にも触れさせないようにするのに。
そう、誰にも。
To be continued…