二年前期終了時点で、オレの単位がやばい。有り余ってるほうじゃなく、後期の授業を詰めに詰めまくらないと進級できないってほうに。
ちょっとばかり朝イチの授業に出られなかっただけで、語学系と選択授業の単位は落とした。ちなみに語学は一年次にも落としていたので、再履修だった。これで来年また受けなければならないことが決定した。
三年次からゼミに所属するための単位がどうしても必要だ。後期はなんとしてでも落とさないようにしないと……

と、いう悩みはさておき。もうすぐ長い夏休みが終わる。残りの時間、楽しんでおかなくちゃ損だよな。
この町に来て二年目。安くて古い、けれども妙に居心地のいいこのアパートの一室に、夏休み中ひきこもっているのはもったいない。
全く外に出ていなかったわけではない。バイトもしていたし、ときどきは友達と出かけもした。実家にも数日帰って、従兄弟たちとしばらくぶりの再会を喜びあった。
けれどもこうして休みも終盤になると、もっと旅行とかしてみればよかったなとか、何かしら挑戦できることがあったよなとか、いろいろ考えてしまうのだ。
隣の部屋から聴こえてくるギターの音色が、後悔と切なさにぐっと響いてくる。あー、ウッチーさんって本当にいい曲作るよなあ。
……単位ーがー、たりーなーいー……不可ーばーかりのー、成績ぃー表ぉーぉおう……
その良い曲に最低の歌詞をのせて口ずさむオレは、最低の学生だ。
もしもまた下手をすれば留年。するとなんということでしょう、同じアパートに住む後輩、比賀ちゃんと同じ学年になるのだ。あの子のことだから、きっと呆れてこちらを睨みながら言うんだろう。
「自業自得ってやつですよ、もっとしっかりしてください!」
うん、自分で口真似してみて、悲しくなった。

ぼうっとしているとろくなことを考えないので、せめて街に出てみることにした。たまには気分を変えて、夕飯をファストフードにしてみよう。
普段はどうしているかというと、隣のウッチーさんや上のシオさん、井藤先生なんかがおかずをおすそわけしてくれる。そうでなければコンビニで適当な弁当を買ってくる。今日は一応外食だ。ちょっと贅沢にいこう。
何を食べようか考えながら歩いていると、前から学生の集団がやってきた。多分高校生だろう、同じアパートに住んでいる少年が同じような格好をしていた気がする。
すれ違いざまに、期末テストの結果の話をしているのが聞こえた。どうやら今回のテストで、内申点がほぼ確定するらしい。懐かしい話題だ。
彼らも一昨年のオレのように、キャンパスライフなんてものに憧れているんだろうか。好きなことを勉強して、サークル活動を楽しんで、まさにバラ色のモラトリアムを満喫してやる。そんなことを考えているんだろうか。
実際はこれだ。単位を落とし、サークルは飲み会だけ参加。ただただ時間をくだらないことで浪費するモラトリアム。渇いた笑いしかでてこない。
「何やってんだろうな、オレ……
誰にも聞こえないように呟いて、駅前のハンバーガーショップに入った。いかにもジャンクフードらしい店内の匂いが、地元を思い出させる。この町よりは少しだけ都会らしさがある場所だ。
だいたい、この町の方がちょっと変わっている。現代っぽくない。小学生が外を走り回って遊んでいたり、スーパーマーケットよりも商店街を利用したがる人が多かったり、人が神社に屯していたり。
このハンバーガーショップにしても、高校生の姿が少ない。どうやら商店街にある、飲食のできる和菓子屋に集まるらしい。変だ。
……
いや、ここではそれが普通なんだ。オレだって、大学生としては失格といっていい部類じゃないか。真面目にやってる奴からすれば、オレが変なのだ。
オレの感覚とはまるで違うこの町で、一年半過ごした。オレはダメな学生だけれど、この町は、住んでいるアパートは、妙に居心地がいいのだ。
「こちらでお召し上がりですか?」
……いや、テイクアウトで」
留年して、もう一年ここにいてもいいかなあ。なんて。
いやいや、ちゃんと単位とって、卒業して、堂々とした気持ちで住んだほうがいいか。そうしたら何年だっていられるさ。

夏休みが終わる。二年生後期が始まる。ちょっと頑張ってみるか。
まずは、朝ちゃんと起きるところから。